連載「暴君夫人」

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最終章
袋小路家よ、永遠なれ-最終章-

「……これも駄目。女王陛下に披露できるレベルじゃないわ」

 

悲しげに東洋有美は手元の皿に目を落とした。河原で摘んだタンポポの胡麻あえ、ふきのとうの天ぷらにフナの甘露煮、華やかさに欠ける料理しか作れぬふがいなさ、そして材料すらろくに買えぬこの現実にさすがの彼女も涙がこぼれる。

 

「うーん、正直ぱっとせんなぁ~。味も悪くはないが何かが足りん」

 

洗剤inの『ワンディウオッシュ』で汚れた鍋を手際よく洗いながら袋小路金高は残念そうにつぶやいた。次から次に泡がでるこのスポンジのようにアイデアがどんどんあふれてくれればよいのだが……、蘭子との勝負を明日にして橋の下には無力感が漂う。

 

 

 

 

「あ~ら、それは鳥のエサ? それとも豚のエサかしら?」

 

薄暗いダンボールハウスに突然光が差し込んだ。『レンジパネルでか』で守られたキッチンの壁のごとくにシミ1つない美しさ、鬼百合蘭子のおでましだ。相も変わらず部屋の隅でふて寝する華子の前にまっすぐ向かい、甘い声で話しかけた。

 

 

「ねぇ先生、勝負する弟子の料理がこれでは明日はをかくだけ。お気の毒だから今ここで先生が三回まわって『悪かったワン』と言えば許して差し上げますわ…いかが?」

 

おほほほほーーー、高笑いする蘭子に対し華子はギリギリと無言でその唇をかむ。

 

「あら~勝負を諦めませんの? 明日が楽しみだわぁ。でも会場への交通費もなさそうだから……これをおめぐみいたしますわね」

 

蘭子は何枚かの百円玉を床に放り投げた。

コロコロコロ……横たわる華子の鼻先に、顎に、肩にぶつかる百円玉。

 

プチっ! 何かが切れる音がした。

 

「こ、この無礼者!!! もう許さないわーー!」

 

ぐいっ! 立ち上がった華子が蘭子の巻き髪を引っつかむ。

その手は『サラッとはがせるホイル』と違って簡単には離れない。怒髪天を衝く。

さらに華子は首をぎゅうぎゅうと絞めあげる。蘭子が白目を剥いたのを見て慌てた清高が止めに入った。

 

「……お、おぼえてらっしゃ…ぃ。げほげほ」

 

ようやく華子の手から逃れると蘭子は小屋を飛び出した。

 

「お待ち!塩をまいてやる!……でも今は塩も貴重品、お前にはこの砂で十分よ」

 

華子は足元の袋から砂を一握り掴みとると、エイッと逃げる蘭子に投げつけた。

 

「まて、華子! それは『帝より賜りし福袋』の中身の砂じゃ。投げてはいかん!」

 

金高の制止も聞かず、興奮しきった華子は逃げる蘭子の背にどんどん砂を投げつけた。

 

 

 

「ぎゃあああーーーー!!」

 

 

 

悲鳴と共に蘭子が突然地面に倒れ込んだ。

 

???

 

「な、なに? あらら、気を失っているわぁ~。どうしたのかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……でもビックリだわ。気絶した蘭子さんが目を覚ますと急に仏様みたいにいい人になっちゃってたんだもの。まるで憑き物が落ちたみたい。でもおかげで勝負は中止、財産も返してくれたから全てすっかり元通り、助かっちゃったわ」

 

涙を流し懺悔していた蘭子の姿を思い出し、有美は小さく微笑んだ。

 

「蘭子にぶつけたあの砂には不思議な力、例えば悪魔祓いのような力があったのかもね。さすが袋小路千年のお宝だ。ま、単に頭の打ち所が悪かっただけかもしれないけどね」

 

清高と有美が歩く袋小路家の大廊下は朝のやわらかな日差しに包まれていた。

 

 

「でも今回一番がんばったのは有美だね。これは僕からの感謝と愛の気持ちだよ」

 

手渡されたかわいいピンクのラッピングを解いてみると中から現れたのは……。

 

 

「まあ、『五徳汚れとりスティック』に『スポンジふきん』、それに冷え性のわたしにやさしい『温熱アルミ伸縮テープ』まで!ダイヤなんかよりすてきな贈り物ね」

 

有美が商品を抱きしめたその時、遠くから華子の呼ぶ声が聞こえてきた。

 

 

 

「有美さ~ん、さっさと華の間にいらっしゃ~い! お仕事たっぷりなのよ~」

 

 

苦笑いする清高を後に残し有美は元気に走り出した。

 

東洋アルミエコープロダクツの商品があればきっと今日も大丈夫。

 

がんばれ有美、そして、袋小路華子よ 永遠なれ!

 

 

つづく

華子のひとりごと

今回で最終話。意外な結末でみなさん驚かれた?あの砂にそんな効力があったなんてねえ・・・、ま、よしとするわ。それより清高ちゃんのこと、有美さんとの仲も認めたわけじゃないし。次は、どうやってお遊びしようかしら・・・、ふふっ。 ではみなさん、また逢う日まで、ごきげんよう。

ご注意

この物語はフィクションであり、 実在する人物、団体、地名、建築物とは一切関係がございません


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更新日 2008年02月22日 | トラックバック(0) |
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